■こんな話あんな話 ■
一九九〇年代に比べて、今度の危機では裁判が極端に少ない。
一番大きな理由は、新技術導入の結果、金融商品契約の複雑極まる内容から詐欺の要素を引き出すには大変な専門知識が必要で、そうした知識を十分備えている弁護士が少なく、検事も少ないからである。
また、裁判になったとしても、難しい内容を処理する能力を備えている裁判官も少ないのが現状だ。
(中略)
もう一つの理由は、一九九〇年代に比べて規制が非常にゆるいこと、そしてそのわずかの規制を回避する技術も発達していることである。
日本でもコンプライアンスという言葉がはやり言葉となったことが示すように、銀行などは、多少インチキでも法に触れない契約とするために、弁護士を大量に用意している。
これでも法治国家と言えるだろうか。
金融業が法を超越する主権的存在となってしまうのも、金融化の帰結なのである。『金融が乗っ取る世界経済』(21世紀の憂鬱)
ロナルド・ドーア著■あんな人こんな人■