こんな話あんな話


『ちゃんとしたそば屋の天ぷらそばもおいしいが、立ち食いそば屋の天ぷらそばもおいしい。
ふつうのそば屋の天ぷらそばと、立ち食いそば屋の天ぷらそばは、さまざまに違う。(中略)
前者の天ぷらそばは、必ずすわって食べなければならないし、後者の天ぷらそばは、必ず立って食べなければならない。
これをあべこべにして食べるには、かなりの勇気を必要とする。 (中略)

と、このようにして、最後の一滴までツユを飲み干して天ぷらそばを食べ終えたことにしよう。
立ち食いそば屋の天ぷらそばは、このあとに少々問題が残る。
口のまわりの油の問題である。
最後のソバをズズーッとすすりこみ、最後のツユをググーッと飲みこんで丼をカウンターにトンと置く。
トンと置いたらすぐに出ていかなければならないのが立ち食いそばの決まりだ。
ノレンをくぐって外に出ると、そこはとたんに世間だ。
口まわりを、カキアゲの油でテカテカさせたまま世間に出て行かなければならない。
ここのところが、天ぷらそばのつらいところだ。』

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6〜7年前のNHKのドラマ「この声をきみに」を偶然見つけたのですが、これが凄く面白いドラマで無茶苦茶ハマりました。
大学で数学を教える冴えない主人公(竹野内豊)。話すことが苦手で、結果、朗読教室で講師(麻生久美子)と出会うコメディで人間的なラブストリー。
ドラマの中でいろいろな人物と本が登場し、一節を朗読するのですが、これがまた面白い。
そんな中にこの「天ぷらそばのツライとこ」が登場する。

Amazonで古本28円で購入してしまいました。(送料は280円)

東海林さだお 著 『ワニの丸かじり』より「天ぷらそばのツライとこ」

              バックナンバー
あんな話 こんな人

 あんな人こんな人
  事業用不動産仲介

06−6360−9791
TOPページに戻る

一覧に戻る