こんな話あんな話■


パソコンやインターネットのような新しいツールなどで、世の中がよくなる、進むと考える人もいることでしょう。しかし、話はそう簡単ではありません。新しい顕微鏡を使いこなすのだって容易ではないのです。顕微鏡の精度が上がれば上がるほどいいじゃないか、というのは実際に虫を見ていない人の考えです。
精度がどんどん上がると、要らない情報も見えてくるようになります。(中略)

虫を見ない人でも、家の中で天井を見上げてみればわかります。
今、頭の上にあるのが天井だということは肉眼で見ればすぐにわかります。
しかし、かりに顕微鏡の拡大率でその天井をみたらどうなるか。
たぶんゴミやホコリが見えて、全体像は見えなくなります。
それが天井だかどうだかはわからない。
精度が上がって、かえってものは見えなくなってしまうのです。

『「自分」の壁』  養老 猛司 著






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