こんな話あんな話

取材を終え、夕刻、先斗町のY志屋で飯を食べ、数軒バーをハシゴして引き揚げようと高瀬川沿いを歩いた。
すると男が三人居酒屋の前で揉み合っていた。
「今夜は私に」「いや、私が払います」「何を言うとんや、わしが誘ったんやで」
支払いのことで財布を手にやっている。
ほう、近頃、珍しいな。 楽しそうだ。 いい光景なのでしばらく見ていた。何なら、その金、私が預ろうか、と言ってやりたかった。

私がいつも感心するのは、どうして金がない人間に限って、
自分が払うとムキになるのだろうか。
金をもってる輩は不思議と支払いの時には姿が失せている。
あれはどこかで教わったのだろうか。

”金持ち喧嘩せず”と言うが、”金持ち支払わず”も本当だ。

『いろいろあった人へ』 伊集院 静 著著  

あんな人こんな人


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