不動産マメ知識コーナー
平成15年の不動産市況について 2003.1
《個人にとっての不動産市況》
年末の与党三党の税制改正大綱決定によると、4月から登録免許税(国税)と、不動産取得税(地方税)の引き下げ、特別土地保有税の課税凍結を盛り込みました。65歳以上の親から20歳以上の子に生前贈与する場合、支払った贈与税額を親の死亡時に相続税額から差し引いて精算する「一体化方式」と、生前贈与の非課税額2500万円(住宅取得資金は3500万円)の非課税枠を設けていますので、富裕層中心に高額物件や、収益用物件に対して購入の動きが期待出来そうです。
反面、一般的な住宅・マンション市場はチョット悲観的です。平成14年後半から在庫の増加(注1)が囁かれ、契約率も4〜5年前と比べると低い数値です。そして今年は不良債権処理の加速により企業倒産と新たな失業者が発生することが確実視(注4)されて、将来の不安、収入の低下と相まって住宅購入意欲が減退しそうだからです。
しかし、販売業者の努力と、「都心回帰」(注2)の趨勢により、購入者にとっては意外な程好立地の物件が期待できるかもしれませんので、今年住宅購入を考えている人にはチャンスかも・・・
(注1) ・・・・・・・・・国土交通省・不動産経済研究所・NIKKEI NET HPより
マンション契約率
【マンションの新規発売戸数に占めるその月の契約戸数の割合で、70%が好不調の分岐点と見られている】
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近畿新設住宅着工戸数
()内は大阪府
※月次データは年換算
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近畿マンション契約率
(%)
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1998年度 |
196,796(82,038)
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74.6
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1999年度 |
202,697(88,036)
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78.3
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2000年度 |
192,852(86,998)
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75.1
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2001年度 |
189,298(87,283)
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72.5
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2002年 1月 |
165,204(75,420)
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60.7
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2002年 3月 |
167,940(78,756)
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73.8
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2002年 5月 |
206,532(111,024) |
76.1
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2002年 7月 |
173,592(81,492)
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75.0
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2002年 9月 |
175,476(82,104)
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71.4
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2002年 11月 |
−
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71.8
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■ 2002年分は、数字の動きは読み取れると思いましたので粗隔月にしました。
近畿マンション在庫数(2002.年の各月末)
5月
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6月
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7月
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8月
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9月
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10月
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11月
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6698戸
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6889戸
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7222戸
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6617戸
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6850戸
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7261戸
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7345戸
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(注2)
東京都では、平成8年度から人口の社会増加(転入増加)が、大阪市でも
平成12年度からプラスに転じている。
平成12年度 +449人 平成13年度 +7690人
(マンションブームのおかげ!? ちなみに、この増加は昭和37年以来38年ぶりの快挙です。しかし、大阪府としては平成7年(阪神淡路大震災の年)を例外として昭和48年からずっと減少している。)■ 大阪府庁HP 大阪府の人口動向
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《法人としての不動産市況》
倒産企業の所有不動産が売りに出されたとしても、昨今の特徴である二極化(注3)の延長線上により、人気のある土地はそれなりに高く、そうでない土地はめちゃくちゃ安い値で売買されるでしょう。
(注3)
現在の日本は東京一極集中と言われ、他の地方はその対極に位置している。又、地域的にも同様の傾向があり、例えば大阪のビジネス街でも御堂筋界隈を頂点として、他のビジネス街とは相場感やや人気度において二極化が進んでいると言われています。個別のエリアの場合でも、商業地の駅前と少し離れた所では、厳然たる価格の相違が現れる傾向がある。このことは、以前のように「あそこが坪100万円だったら、うちは120万円位はするね!」と言うような、相場感だけで価格決定が行われないというこであります。
■取引事例法から、収益還元法へと時代が変化しているからです■
<次回の不動産マメ知識コーナーで取上げる予定です!>
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昨年は大企業所有の不動産の処分が目につきましたが、今年は中小・零細企業そして製造業の不動産の処分が多くなりそうで、その場合はより「企業としての存続にかかわる問題」に直結することになります。(注4)我が大阪は中小企業の都市ですから、特に心配であります。
(注4)
2002年度上半期倒産・・・近畿(2167件)は上半期として過去最高、関東(3283件)は上半期で過去2番目を記録(帝国データバンク)
完全失業者は近畿全体で78万3000人。このうち大阪府は38万1000人、兵庫県は19万7000人で、この2府県で約7割を占める。総務省は「近畿に集まる製造業の就業者の落ち込んだ影響が大きい」とみる。政府は不良債権の処理の加速などを背景に、2003年度の完全失業率を過去最悪の5.6%(2002年度は5.4%)と見込んでいる。全国のブロック別でも失業率の高さが目立つ近畿にとって雇用対策は来年も大きな課題となる。(日本経済新聞H14.12.28)
大手銀行が抱える不良債権のうち、製造業向けが増加している。(中略)不良債権の発生原因が過去の投資の失敗などで生まれたバブル型から、長引く不況や物価の下落で起きるデフレ型に変わってきている。 (日本経済新聞H14.12.29)
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より不況が深刻になれば、売却物件の増加傾向は止めることは難しいと考えられますので、買い手に“値を叩かれる”状況は避けられません。反面、人気のあるエリアや、良質の収益物件などは、個人富裕層や投資意欲のある法人の競争等もエスカレートして、結果として「イイ値段」で取引が行われるのではないでしょうか。
以上、今年の不動産の動向を考えてみました。
予想はそうならないから予想であって、その通りになるのなら世の中こんな風にはなっていなかったでしょうから、大方の予想に対しては、それと反対方向に動こうとする力が出て来ますので、意外な展開になるかも知れません。
■どちらにしても、不動産対策はそれなりの時間と、多額の資金が動きますので早めの対策をご検討下さい。
最後に、今年も仕事は楽しく、家族の皆さまが健康に過ごせますようにお祈りいたします。
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