新たな女性の時代へ…  <2002.6>

今では、女性が男性と同じ仕事をし、高額の収入を得ても何ら不思議にも感じませんが、社会制度を見てみると、女性と男性の扱いの違いがテーマになることが時々あります。
最近の話題では、
◆税制改正に伴う【所得控除】と【税負担】の問題 ◆年金制度改正に伴う【専業主婦の保険料】の扱いというテーマが、女性の社会進出と平行して論じられています。
そこで今回の“FPなコーナー”は、その2つのテーマと 
◆働く女性の状況についての3部に分けて新たな女性の時代について考えてみたいと思います。

 part1 ◆税制改正に伴う【所得控除】と【税負担】の問題 
 part2 ◆年金制度改正に伴う【専業主婦の保険料】の扱い 
 ↓
 part3 ◆働く女性の状況について 

part1◆税制改正に伴う【所得控除】と【税負担】の問題

現在日本の納税者の1/7(約700万人)が確定申告をして、残り6/7(約4000万人)の人達は会社を通して、源泉徴収・年末調整により納税しています。
よく言われている“納税意識の欠如”は、このあたりの制度と関係があると考えられています!
そうだとすれば、我々の納税意識の向上を図る方法は案外簡単に見つかりそうですが・・・。
(おかげ様で私などもサラリーマン時代は全く無感心で毎日を過ごしておりました。)

税制の見直しは、今年後半にはより具体的になると思いますが、課税最低限(注1)の引下げが確実視される中、各種の『所得控除』(注2)については、抜本的に見直しが行われそうな気配です。
特に『配偶者控除・配偶者特別控除』(注3:よく『パート収入は幾らまでが得なのか!』の話題に出てくるあれです・・)については、現在の女性の多様な生き方からも、見直すべきだと言われています。
働く人の四分の一は、所得税を納めていません(注4)が、その人達も納税者になり、一方で高い税金を払っている人の「不公平感」を和らげるため全体として税率を引き下げるとすることで、広く浅く税負担をしてもらい社会の活力を生みだそうと考えているようです。
パート収入「103万円」(注3の表参照)を意識して働く時間を調整してきた女性にも遠慮なく働いてもらい、多くの人に少しでも納税してもらおうということです。
これから、特に専業主婦やパート収入のある主婦家庭にとって、今後の税制論議は大いに気になるところであります。
低成長で所得の伸びがあまり期待できないし、急激に少子高齢化の進む日本の現状では、こういった制度改正の方向もあり、今まで補助的に働いてきた女性が本格的に仕事をする
女性へと変化し、活躍するキッカケになりそうであります。


(注1) これ以下なら納税が免除される所得金額のこと。
(注2)の各種の控除額を所得から差し引いて決まります。つまりその金額は人によって違うということです。
所得税の場合、独身者は給与所得が114万4000円以下、妻と子供2人のサラリーマンなら、384万2000円以下なら納めなくてもいい。
(注2) 年末調整で受けられる所得控除
●社会保険料控除 ●基礎控除
●小規模企業共済等掛金控除
●生命保険料控除 ●損害保険料控除
●障害者控除    ●老年者控除
●勤労学生控除  ●寡婦(夫)控除
●配偶者控除    ●配偶者特別控除
●扶養控除
年末調整で受けられない所得控除
●雑損控除
●医療費控除
●寄附金控除
◎ その他、住宅ローン控除は、最初の1年目の控除は確定申告にて、2年以降は会社の年末調整で受けられます。

(注3)配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み
配偶者特別控除は
(1) 配偶者の収入の増加に応じてなだらかに控除額が 減少し、(現行では、収入70万円から控除額の消失が始まり、非課税限度額である103万円で消失がいったん完了する)かつ、
(2) 収入の非課税限度額103万円を超えても(すなわち、独立した納税者となっても)、年間の収入が141 万円までは控除が適用される(103万円を超えると 消失した控除額が全額復活するとともに、収入の増加に応じた消失が始まり、141万円で完了する)ようになっている。
配偶者控除・配偶者特別控除制度の仕組み
●配偶者控除は、所得税で38万円であり、住民税では33万円と異なります。
●配偶者特別控除は、納税者である人の所得が1000万円超だと受けることができません。

(注4)こんな資料がありました・・
塩川財務大臣は財政演説で、突然「税負担の空洞化」を強調わが国の所得税課税最低限が高すぎる「働いている人のうち4分の1が所得税を負担していないのは異常」と言っていますが
・ 政府提出資料−「非納税者率」
  80年  34・0%
  85年  29・5%
  90年  25・1%
  95年  23・0%
  00年  26・0%
実際には、80年の34%が00年には26%へ非納税者が減って納税者が率でも絶対数でも増えている。

part2 ◆年金制度改正に伴う【専業主婦の保険料】の扱い

少子高齢化のため社会保障は今後増大していく状況です。
その保険料(年金・健康保険)の問題も大きなもので、例えば国民年金第3号被保険者(注1)である自分の保険料は、夫の給料から天引きされていると思っている妻が多いと思いますが、これは間違いであります。
第3号被保険者の老齢基礎年金の給付にかかわる費用は、厚生年金・共済年金の制度全体が拠出金という形で負担しています。
そして、その負担はこのままでは支えきれないレベルになり、基礎年金の国庫負担割合を現行の1/3から1/2に引上げることができるためには、その分3兆円弱の財源が新たに必要となるそうであります。
自営業者などの加入している国民年金においてもその対象者の2割弱が保険料を払っていない状態であり、問題は深刻です。
(注2:関連記事)

(注1)第1号被保険者=自営業者・20才以上の学生等
    第2号被保険者=サラリーマン・公務員等
    第3号被保険者=第2号の被扶養配偶者 
■妻が第2号で、夫が妻の健保の被扶養配偶者になっていれば、
夫は第3号になる。


年金制度は、5年ごとに見直しがなされます。
次回2004年に向けた論議のなかで、今回のテーマである女性が登場してくるのが、パートタイマーや専業主婦など年金保険料を負担しない女性と自営業者の妻との不公平感を解消する制度についてであります。

年金対象者 (簡単ですが)問題となるテーマ
専業主婦 自分自身では保険料を負担していない
自営業の妻 働いていなくても保険料負担している
キャリアウーマン(共働き) 専業主婦を持つ夫と同じ保険料負担
今考えるのは、妻の保険料負担をだれがするのかという点ですので、新たな年金制度(401k)や最近うるさく言われている“自己責任”の発想などからして、本人又はその家族で解決する方向になるのではないでしょうか!
しかし、このような問題を単なる負担増と考えるのではなく、この際配偶者控除や家族手当などの壁を超えて自分自身のために、本格的に働いてみるキッカケにしようとする女性が多数出てくるだろうと思います。
今不景気な世の中で、社会に出て順調に収入を得るには様々な障害があるでしょう。
しかしながら、それは今や男女問わず直面する問題でもあります。
今後女性にとって、男性並み(?)の保険料負担は、兎にも角にも女性の社会的・経済的自立を促進することになるでしょう。

(注2)
厚生労働省は15日午前、2000年国勢調査に基づく将来推計人口から試算した年金財政の将来見通しを自民党厚労部会などに提示した。

 少子化の進展が現状並みの場合、現行の年金給付水準を維持するには、2025年度以降の厚生年金保険料率は、ボーナスを含めた年収の24.8%(労使折半、現行13.58%)、国民年金保険料は月2万9600円(同1万3300円)が必要となる。前回1999年の年金財政再計算と比べて、厚生年金は3.2ポイント、国民年金は4400円も上昇し、「厚生年金保険料率は年収の最大2割程度」との政府の公約が覆る。このため、2004年の次期年金制度改正では、年金の給付切り下げと負担増が大きな焦点になるのは確実だ。

 今回の試算は、少子化の動向を示す合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数)が<1>現状(2000年1・36)より回復する高位(1・63)<2>現状並みの中位(1・39)<3>厳しくなる低位(1・10)――の3類計の人口推計を使用。各推計について、基礎年金の国庫負担割合が現行の3分の1のままの場合と、2004年10月から2分の1に引き上げた場合の計6通りを試算した。

 少子化が最も進む低位推計では、国庫負担が現状のままの場合、厚生年金27・5%、国民年金3万3000円と、現行の2倍以上への引き上げが必要となる。

 国庫負担の引き上げが実現した場合は、中位推計で厚生年金22・4%、国民年金2万1600円にとどまり、保険料の引き上げ幅は改善される。

 厚生年金の保険料率は、現行制度では月収の17.35%だが、来年4月から年収ベースで徴収する総報酬制に切り替わるため、年収ベースで比較した。

 一方、同省が同日公表した「社会保障の給付と負担の見通し」によると、年金と医療、福祉(介護を含む)の社会保障負担総額は今年度の82兆円から2025年度には182兆円へと2倍以上に増加する。

 また、社会保障負担と租税負担の合計が国民所得に占める割合を示す国民負担率は、今年度の38.3%から2025年度は52.5%に悪化し、2000年10月に行った前回試算時より1.5ポイント増えた。(読売新聞 2002.5.15)

part3 ◆働く女性の状況について

このように現在の税制・社会保障制度は、女性が『サラリーマンと結婚し、月におおよそ10万円までのパート収入を得る主婦である』ことを基準にして考えると解りやすいものです。
ところが、女性の高学歴・未婚・晩婚・少子化や平均寿命の延び、そして昨今の不景気が重なり、今までの男性社会の行き詰まりを打開する為には“働く女性の存在”が間違いなく必要です。
そこで、各種資料で働く女性の状況を見てみますと、まず出産後も引き続き働く職場は官公庁が良く、親と同居しているケースも多い(資料1)、そして案外子育ての負担感は、共働きの方が少なく(資料2)、しかしながら家庭と仕事の両立の悩みは男性より深く(資料3)、一度退職すると再就職は年齢制限などの理由で難しい(資料4・5)と言ったイメージであります。
その上、今回part1・2のような社会制度【配偶者控除・健康保険・年金】の壁があり、現実的には自宅近くのパートへと働き口を求めると言ったパターンが多くなります。
しかし、現在負担している人達の負担をこれ以上増やすことは無理がありますし、受給年金額の引き下げや先送りにも限度があります。
「出生率低下」「高齢化」「不景気」が引き起こした問題提起は、女性と高齢者の負担力(経済力)を高める方向で解決を図ることになることに落ち着きそうです!
(単に女性が働きやすくすると、返って「少子化」が進むという意見もあるようですが・・・)
女性や高齢者が無理やり働くのではなく、自己実現のために就労意欲が湧き、その“後ろ姿”を見て育つ子供達にとっても将来的に働く意欲と夢の持てる制度になることを期待したいと思います。

(資料1)

資料出所:国立社会保障・人口問題研究所「第2回全国家庭動向調査」(平成12年)
注) 第1子出産前に仕事に就いていた者のうち、出産後も就業を継続していた者
(資料2)子育てをしている女性の子育ての負担感第2−17図
資料出所:(財)こども未来財団「子育てに関する意識調査」(平成12年)

(資料3)仕事と家庭の両立の悩み・ストレス(既婚者)資料出所:(財)21世紀職業財団「キャリア形成と仕事と家庭の両立に関する意識調査」(平成13年)
(資料4)女性の再就職に当っての問題(複数回答)(問題が「ある」と回答した者について)
年齢制限がある場合の上限の年齢(複数回答)


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