定率減税廃止と住宅ローン控除−住宅購入した方に− 2004.12.
「定率減税」の(段階的)廃止の話題は、消費税引き上げの序曲として感じられるところがあって、とっても憂鬱なものです。
取敢えず大企業や一部の中小企業については景気が良くなっているというのは分かりますが、個人の所得が同じように良くなっているという感じではありません。
また、大阪のオフィスビル空室率が下げ止まったとかも、大規模物件の数字が引っ張っている訳で、中小のオフィスは相変わらず苦戦しつづけています。
そして一般的な(平均的な)賃貸マンションの賃料や、空室状況がそれほど改善しているとは思えないので、不動産業者としては個人所得の停滞感を感じます。
「定率減税」は所得税で最大25万円が控除できるというものですが、当然のことながら所得税額が125万円ないとその金額(25万円=125万円×20%)にはなりません。
所得税額が125万円位の人とは、課税所得額(←手取りではありませんよ!)で1000万円以上のクラスになりますので一般的には富裕層クラスでしょう。
元々「定率減税」は「景気浮揚策」の一つですから、最も効果がある給与所得者400~800万円クラスがターゲットでしたし、今回の廃止でも最も影響を受ける層となるはずです。
一般的には「定率減税」額が5万〜10万円位でしょうか。
そしてそれは丁度“昨今のマンション・建売住宅ブームの購入者”層とピッタリ重なります。
「住宅ローン減税」のあらまし
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居住開始日
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H16.1.1~16.12.31
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控除期間
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10年間
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最大控除額
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50万円/年(×10年間)
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対象者の所得制限
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3000万円以下
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住宅ローン年末残高と控除率
(返済期間10年以上であること)
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1年目〜10年目まで
年末ローン残高の1%
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適用対象住宅
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居住用住宅+その敷地の取得、増改築等
中古住宅の場合 耐火建築物→築後25年以内
非耐火建築物→築後20年以内
床面積要件 登記簿面積50u以上(上限なし)
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譲渡損失の3年間繰越控除併用は平成18年12月31日まで適用可。
売却する家のローンが完済されていても繰越控除が適用されるようになっています。
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いわゆる「3,000万円特別控除」などの特例をうけていないこと。
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平成17年1月1日以降平成20年までの入居については、10年間の控除はあるが、年末残高額や控除率は段階的に引き下げられる。
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「定率減税」と「住宅ローン控除」は併用できますので、来年から多少制度が変わってもおそらく併用出来るでしょうから、おおよそのところは押さえておきたいものです。
■納税額を算出する手順としては
@ 確定した所得税額から年末ローン残高の1%相当額を差引く…A
↓
A Aに20%を掛けて定率減税額を求める…B
↓
B(A−B)=納税額が決定!
このように「定率減税」よりも先に「住宅ローン控除」しますので、住宅購入者にとっては「定率減税」廃止の影響は少なくできる場合が多いと思います。
例
サラリーマン:鈴木 十郎さんの場合
今年3000万円(現金+ローン)で新築住宅購入:夫婦と子供2人の4人家族
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年 間 給 与:ボーナス含
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600万円
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給与所得控除
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▲174万円
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社会保険料控除
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▲ 70万円
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配偶者控除
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▲ 38万円
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基礎控除
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▲ 38万円
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扶養控除
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▲ 38万円
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特定扶養控除(注)
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▲ 63万円
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生命保険料控除
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▲ 8万円
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損害保険料控除
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▲ 1万円
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課税対象所得金額
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170万円
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所得税額(170万円×10%)
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17万円
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住宅ローン控除(年末残高2000万円×1%)
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▲ 20万円
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定率減税
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―
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年税額(17万円−20万円)
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0 円
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鈴木十郎さんの場合、「定率減税」の恩恵を受けることなく、確定申告で源泉徴収税額が還付されることになります。
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(注)特定扶養控除…扶養親族のうち、年齢16歳以上23歳未満の人(昭和57年1月2日から昭和64年1月1日までの間に生まれた人)をいいます。
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