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 マンション投資は危ないのか!―ペイオフ対策・年金になりえるのか!−

<2002.7>

最近、ビジネス雑誌だけでなく一般週刊誌でも、投資用マンションの販売が活況を呈しているという記事をよく見ます。
記事の内容は新築ワンルームのことについて書いてあるのですが、新築・中古・ワンルーム・一棟売りであっても考え方の基本は同じです。

今回は、別に【FPなコーナー】で『マンション投資と他の投資商品との比較』を扱ってみましたので併せてご覧下さい。

確かに投資家にとって、ワンルームマンション投資はなかなか魅力のあるものだと思います。
広告記事によると、ワンルームの1住戸とは言え店子(入居者)が入れば、毎月の収支は差し引きプラスもしくは若干の持出しになり、後々も資産として保有すればペイオフ対策にもなるということです。そして他の商品より高利回りです。
本当にそんなにうまい話があるのか?

そこで"不動産屋"として、ワンルームを例にマンション投資の効用を
≪前編=厳しいデータ≫≪後編=それでも購入!≫
の二部に分けて考えてみました。

≪前編=厳しいデータ≫

まず収益還元法でシュミレーションしてみましょう。

詳細シュミレーションを行うと入居空室率や価格変動率・長期修繕費用・税金・手数料を考慮することになります。 
今回は基本的な考え方についての考察ですので簡便シュミレーションで考えました。
  大阪市中央区xx町   購入価格  1500万円   
   年間収入 90万円   年間諸経費(2%) 30万円    
   10年後の売却予想価格 1200万円    
   投資期間 10年間   購入者の期待する利回5%(注1)
   [諸経費は管理費・修繕費・固定資産税の合計額とする]

検証その1

上記の投資用マンションをいくらで購入すれば期待利回りに合うかを計算する。
ちなみに、この物件は表面利回りでいうと6%(=90万円÷1500万円×100)です。

(イ) 毎年の純収益の現在価値累計
年次 純収益    5%の複利原価率(注2)  現在価値
1年目 60万円 × 0.952381= 571千円
2年目 60万円 × 0.907029= 544千円
3年目 60万円 × 0.863838= 518千円
4年目 60万円 × 0.822702= 494千円
5年目 60万円 × 0.783526= 470千円
6年目 60万円 × 0.746215= 448千円
7年目 60万円 × 0.710681= 426千円
8年目 60万円 × 0.676839= 406千円
9年目 60万円 × 0.644609= 387千円
10年目 60万円 × 0.613913= 368千円
                      計 4633千円

(ロ) 10年後に売却した場合の転売価格の現在価値

10年後の転売価格  5%の複利現価率    現在価格 
12000万円   ×   0.613913   = 7367千円

(イ)+(ロ)=購入限度額
4633千円+7367千円=12000千円

∴1200万円以下で購入すれば期待している投資利回り(5%)を獲得することが出来ます。
(注1)期待利回りは、表面利回り(年間家賃÷物件価格)ではなくネット利回り(〔年間家賃―年間費用〕÷〔物件価格+購入費用〕)と予想売却価格を考慮したものであります。
(注2)複利現価率とは、ここでは、n年後の価値を年率5%で割引いた現在価値を算出する数値。

検証その2

上記の投資用マンションを購入した場合の投資利回りを計算する。

この物件の投資利回りは、2.19%です。
パソコンがないとなかなか計算できませんが、購入価格の1500万円と10年後の転売価格1200万円を割り引いて計算した複利現価率が2.19%なのです。
(計算式省略します)

検証1、2から雑誌や新聞広告で見た物件の表面利回りと、収益還元法を踏まえた利回りとはかなり開きのあることが解ります。

次に投資用マンション購入後の注意ポイントを少し挙げておきます。
マネー雑誌などではリスクとして、次のようなものを挙げています。
(1)空室率の上昇    (2)借入金利の上昇
(3)火災等の損害リスク (4)設備劣化リスク

これらは、勿論それぞれ大切な注意ポイントでありますが、この【不動産マメ知識コーナー】では、もう少し違ったポイントを2つ挙げておきましょう!

注意ポイント@『マンション管理組合のメンバーになる覚悟
マンションにお住まいの方はよくお分かりだと思いますが,ワンルームでも集合住宅に変わりはありません。
ファミリーマンションを買うときによく聞いた、『マンションは管理を買え!』と言う言葉を思い出してください。
管理組合の運営は理事長や書記・会計になればそれなりに大変なものですし、最近は管理会社の不祥事などの事件もあって、役員以外は何もしなくていいと言う考えは、マンション投資家にとってよろしくありません。
マンション管理組合の行う維持管理や老朽化対策は、マンション投資家が入居者を"イイ家賃"で確保するためや、最終的に売却する価格を"イイ価格"に決定する大切な要素だからです。

注意ポイントA『売却時ローンはいくら残っているのか?
この点も投資用マンションに限りませんが,例のようなマンション1500万円を自己資金10%借入金90%として10年後に1200万円で売却した場合、ローン残高によっては現金の持出しが必要であります。
その場合,現在の不良債権問題と同じく、売りたくても売れないといったことが起きる可能性があります。
(ローンを組むこと自体には問題はないのです・・・)
全く余裕のない資金計画では危険性があります。
勿論、物件価格が嬉しいほど高くなっていたら話は別ですが・・・。

≪後編=それでも購入!≫

前編だけでは,そんなことならマンション投資はやめておこうと思ってしまいますネ!
しかし、マンション投資は最近始まったものではありませんし、従来からあるもので、それなりの魅力・理由・必要性があるのです。

■総合収益率という考え方
まず、前編のシュミレーションでもお気付きのように購入価格より売却価格のほうが300万円下回ってもトータルの利回りはプラスです。(この場合投資利回り2.19%です。)
従来マンション投資の大きな目的は,キャピタルゲイン(売却益)でありました。
不動産は値下がりしない前提のもと、インカムゲイン(収益)などは気にしなくても構わないというものです。
ところが、昨今は年間収入で6%とか10%とかの高利回りで、売却時には買値の?%ダウンした価格を前提にしています。
結果として,売却価格+賃料収入を総合して考えて投資する商品になったわけです。
総合収益率=インカム収益率+キャピタル収益率としては、平成4〜5年頃から反転しているそうです。
つまり、不動産は値上りしているということも言えるのです。
外資系の企業が日本の不動産に目を向けた理由がここにあります。
規模や金額は違いますが,一般庶民もその恩恵に与らない手はありません。

■ 節税としての不動産効果

以前よりは効果が薄くなったとは言え,不動産は金額が大きいのでチョッとしたことで税負担を軽減できたりする資産です。
(1)
不動産賃貸は、「5棟10室」基準で例えばマンションを10戸以上持っていれば事業性があるとされ、青色申告の特別控除額、親族の給与支給、事業用資産の買い替えの特例などを受けることが可能になったりします。
(2)
収益用不動産を現金だけで購入する人は非常に少ない。
例えば,不動産を借入金で購入する目的の1つは、節税面のメリットを享受するためであります。
借入金利子は経費として認められています。
土地の借入金利子は例外です。
     例)収入   90万円
        費用  120万円(内土地借入金利子20万円)
        所得  ▲30万円
        損益通算できる赤字  10万円
他の所得の黒字と不動産所得の赤字を通算できます。
また、売却時も赤字になれば通算できます。(これが金額としては大きいものになるでしょう!)
(3)
相続のことを考えて購入する場合もあります。
相続発生時に、建物については貸家の評価減、土地については,小規模宅地の評価特例・貸家建付地評価減などで相続評価を低くし,借入金残債務も控除できる。
転売時の予想価格が,取得価格を下回ると各相続人において不動産譲渡損が発生し,他の所得と損益通算できますので、節税効果の1つに考えられます。

■現金の分散化
不動産投資は長期期間の借入が可能ですし、限られた現金をいろいろな投資に分散し、結果としてリスク分散を図れることも長所です。
「てこ」の応用(レバレッジ効果)で少ない資金で大きな資産を運用できるのも魅力です。

まとめ

マンション投資は,私的年金やペイオフ対策にならないとは言えませんが,元本保証でないことは確かですのでリスクのあることは間違いありません。
少なくとも(相当なプロでない限り)余裕資金のある方や,購入目的が極めてはっきりしていることが大事だと思います。
もしあなたが不動産購入の初心者であれば、高い利回りばかりに気を取られずに利回りはソコソコでも、将来とも安心感の持てる物件を探すことをお勧めします。
そして、将来あなたが、目的を達成して売却するときや、金銭的・精神的に困ったことが起きたときどう対処するのかも、一応考えて購入して下さい。

事業用不動産の売却・購入・買い替えなどいろいろな身近なご相談受け賜ります。

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