不動産マメ知識コーナー

 【ミスは何故起ったのか!】  
2003.11.


自民党の中曽根サンや宮沢サンの引退問題は、戦争体験を含め豊富な経験・知識を今後どう活かしていくのかということを考えると、何か勿体無いような気がしました。
そういえばこの前TVで、長引く株式市況の低迷で証券会社の営業マンが“株の売買に不慣れ”になっていて、今一生懸命『研修』しているというニュースを見てしまいました。
不動産業界でもバブル崩壊後15年以上が経って、証券業界と同じような問題もあるように思います。
バブル期に未成年だった人達も第一線でバリバリ活躍するようになっています。
あの頃はは不動産取引が活発でしたからごく普通の営業マンでも件数をこなしており、取引上の手続やチェックポイントが自然と経験できて、自分のものになるというメリットがありました。

でも最近では取引件数自体が少なく、権利関係の複雑な物件(弁護士サンの扱うような物件)や大企業のリストラ物件などは入札方式が大流行ですので、買主・売主の間に入って話をまとめたり、特別に事前に物件調査しなければならない案件を経験出来ないままに、バリバリと活躍することにもなります。
そこで今回は、私のある経験を取上げて“ミス”はどういうふうに起り、また防げるのかを考えてみたいと思います。
(当時の関係者の都合もありますので、細部についてはボカシをかけておきます。)


もう何年も前のことになりました。

超有名企業のA社がリストラ対策としての遊休地の処分に伴い、大手不動産会社のB社を窓口として買い客を探しておりました。
以前から順調な業績を続けていた社員20名程のC社が倉庫用地として購入を希望し、当社が受け取った『買付証明書』(注1)を提示し、多少のやりとりをしながらA社との商談は順調に進めていきました。
『売渡承諾書』はA社の都合とB社の信用に圧されて交付せず、重要事項説明書や契約書の内容を文書化しようと言うことになりました。

そんなある夜、当社にB社から「どうしても今夜、すぐに会いたい…」旨の電話がありました。
出掛けてみると、B社の担当者は今回の取引をA社の都合で断りたいと言うじゃありませんか!
話を聞いてみるとA社の担当者(といっても部長)はこの間まで営業の第一線で活躍していた人で、リストラされた総務部長の後任に配置転換されて間もないとのことでした。

今回の遊休地は30年前に取得したもので、その後土地区画整理事業の後未利用地となり、減歩により従前の面積より減少したままの状態で、A社としても特別気になる土地でもなかったようです。(注2)
そんな土地をA社の部長は自分1人で処理を進めた訳でした。
そして、A社部長は従前の面積が書かれた登記簿謄本を見つけ自ら資料を作成し、B社の若い担当者へ渡していたのでした。

こちら買主側は直近の謄本で面積は独自に確認済みでしたが、A社との商談では「坪〜万円」と言った表現で話が進んでいたので総額(=面積×坪単価)が表に出なかったのです。
ままあることですが、坪数間違えるなんてことはA社に限って絶対ないと言う暗黙の了解があったからです。

ですから、A社の部長はB社からの契約書案を見たときに飛び上がって驚いたと言うことです。

いくつかのミス(A社の人事・担当者の能力や経験・B社のチェック・思い込み…)が重なって起こったケースですが、こうなった以上買主も買うに買えない状況になってしまい、A社は(担当部長以外)その売却できなかった理由も解からないまま、担当部長が退職するまでその土地を持ち続けました。

被害者・買主はその後全く別の物件を購入し、社業は相変わらず順調であります。買い手側の仲介業者(私ですが…)は心の処理をするのに大変時間がかかりました…。

何も知識・経験だけが総てではないけれども、宅建試験に合格しているからといって、不動産のプロになったわけでもありません。(勿論、試験には合格しておかないといけませんが…)
不動産自体は同じ物が2つとないので、それこそ11件がオリジナルの取引となります。
買う人・売る人も十人十色、いや百人百色とすると、不動産屋というのはそれ相当の時間と経験をかけてようやく一人前になれる職業だと思うのです。


(注1)『買付証明書』と『売渡証明書』
            
※下記「不動産マメ知識コーナー」ご参照下さい   
            2002.4  売買契約前の重要書類につい


(注2)土地区画整理事業

公共施設の整備、宅地の利用増進などを図るために、事業区域内の土地所有者から少しずつ土地を出しあってもらって、事業区内を整然とした区画にする。
そのため、土地所有者の仮換地される面積は従前のものより減少するのが通常であります。これを減歩と呼びます。
単に面積が減るだけなら損失としか考えられないが、整然とした区画の土地の利用価値は従前のものより高まると考えられるので、実際には損失には当らないと考えられる。
また、是正策として精算金などの制度もあり一方的な不利益は避けることができる。