不動産マメ知識コーナー
【不動産の値踏み】公的価格と時価
2003.2.
なりやら不動産市場が迷走しているようだ。
金融機関の不良債権処理を急ぐあまりか、なにやら慌ただしく不動産が人目をさけて動いているようだ。
潰れそうにない有名企業さえも所有物件をバルク売りしたりする。
ある金融機関などは競売では殆ど回収できない物件を、少しでも多く+速く処理するためにあっと驚く価格で投げ売りしたと言う話さえ聞こえる。
ペイオフは延期されたが、来るべき其の時に備えて潤沢な現金を不動産に代える宗教法人・学校法人・中小企業の噂も聞こえてきたりする・・
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不動産を購入する時は、普通は銀行に担保価値を査定してもらい借り入れ金額を決め、自己資金とのバランスを考えつつ、返済計画を立てるものです。
その際、参考にしているのが路線価や、固定資産評価額、公示価格、基準地価格など公的に発表されている不動産価格であります。
それらの資料は全国的なものですので大変便利です。(極端な話、実物を見なくてもその不動産の価格が分かるのですから・・)
特に路線価は、実勢価格の80%を目安としている国税庁の出した価格でその土地の間口や奥行き、また角地や形状まできめ細かく計算方法が決められていて大変重宝するものです。
しかし、現実の不動産市場は今大変混乱していて、過去を引きずったまま年1回発表の路線価では現時点の価格を想定できなくなっています。
勿論、路線価は相続税の算定のためにあるので、時価を知る為に存在しているわけではありません。 しかし、一般には実勢価格を知る時に「路線価」を知ることが物件価値を知る有力な指標になっています。 今回の『不動産マメ知識コーナー』は、その実勢価格とその指標の歪みを検証することを目標とします。
大阪市の中心部、中央区の二ヶ所(商業地・オフィス街)の路線価と収益還元的価格について考えてみましょう。
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<事例その1>・・・商業地の場合
大阪市中央区西心斎橋2丁目10付近
地下鉄心斎橋駅徒歩5分
用途地域:商業地域 建ペイ率80 容積率500
アメリカ村 もともと、御堂筋の東側は心斎橋筋商店街や大丸、そごう等があり大阪の中心街ですが、現在の西心斎橋はそのバックヤード的な位置付けで、商業立地では無かったのが幸いして賃料が安く、1970年頃アメリカ西海岸の古着、雑貨、音楽を商売にした店が出始めたのが始まりと言われている。 1990年にタワーレコード出店、1993年旧南中学校跡に(大型商業ビル)ビッグステップがオープンし、現在では各地の修学旅行生が訪れるまでになっている。
平成14年の路線価 59万円/u→ 195万円/坪
平成13年 〃 68万円/u → 225万円/坪
平成12年 〃 83万円/u → 274万円/坪 |
すぐ東側に100m程歩くと御堂筋であることを考えると、そんな評価額なんですか!って言ってしまう価格です。
大阪ミナミの「アメリカ村」ですから建物1階の賃貸料は、少なくとも3〜4万円/坪以上(6万円/坪以上何てところもあります・・)は取れますので、収益還元的な考察をすれば【別資料A】(クリックして下さい)のような数値(この場合、坪327万円)になります。
実際、アメリカ村内でまともな売り物であれば243万円(=195万円÷80%⇒実勢の八掛として )なんて言う事はありません。
<事例その2>・・・オフィス街
大阪市中央区久太郎町1
地下鉄堺筋本町駅徒歩1分
用途地域:商業地域
建ペイ率80 容積率1000
船場地区 船場は豊臣秀吉が大阪城を築いた際、生活用品、料亭、宿などをこの地域に整備したのが始まりとのことです。昭和時代には丼池問屋街、南久宝寺問屋街など繊維卸売業者が活況を呈していた。 1970年、本町〜堺筋本町の東西に船場センタービル[上は阪神高速道路]が完成。 1980年、東区が南区と統合して現在中央区に属する。
平成14年の路線価 63万円/u → 208万円/坪
平成13年 〃 75万円/u → 250万円/坪
平成12年 〃 94万円/u → 311万円/坪 |
大阪の中心部について相場感をお持ちの方でしたら既にお気付きかと思いますが、主観の相違があったとしても、現状では西心斎橋と久太郎町の相場価格は明らかに西心斎橋(アメリカ村)に軍配が上がるでしょう。
しかし、路線価ではこの久太郎町の地点では、ここ数年の大きな下落率(注1)にもかかわらず、未だに西心斎橋を上回っています。
(注1) 平成12→14年では、
<事例その1> 79万円/坪・28.8%減
<事例その2> 103万円/坪・33.1%減
※内容を簡素にするため、間口・奥行・地形など考慮せず単に路線価そのものだけを使用しております。 |
少し南方向に歩けば「南久宝寺の問屋街」を持つ、忙しい町ですが、<事例その2>付近はやはり大阪の中心的オフィス街であります。
ここでも収益還元的考察を試みて【別資料B】(クリックして下さい)のようにその価格を算出してみました。(この場合には、坪175万円となる)
【別資料A・B】とも前提条件が大切なポイントなのですが、キャッシュフローと売却予想額、期待利回りなど、それぞれ設定が大変難しいものであります。
それは、うわさの債権を買い取るときでも同じです。
どのような基準で債権買い取り価格を決定するのか、ということです。
国の方では「実質簿価」が高すぎるので、「適正な時価」での買い取りに決まり、ある程度の歯止めをしたようですが、収益還元(DCF)法による資産査定でも、予想キャッシュフローと割引率の採用いかんによっては、時価よりも割高での買い取りがありえます。
収益用以外の物件、例えば自宅としての戸建て住宅や分譲マンションは収益還元的な考えには馴染まないと考えますので、以前「FPなコーナー」(2002.11)で取り上げた考え方が良いのではないかと思っております。・・個別物件の魅力+買主側の返済能力に応じた価格を基準にして考えるということ!
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