不動産マメ知識コーナー
キャピタル狙いですか?収益還元法
2005.9.
衆議院選挙は刺客騒ぎもあってか結構盛り上がっていて、各政党の公約も色々でした。
でも考えてみれば、これまでの公約は果たして守られて来たのか?
結構言いっぱなしになっていても、有権者も追求まではしないものです。
不動産や株式投資でも同じく、購入時にはあれこれ思案し、検討したのにもかかわらず、時間が経つと当時のことは忘れてしまう。
当初とは状況が変わって、想定外のことがいろいろと出てくるからでしょうか。
勿論、良い方向に変わる場合もあるし、悪い方向に変わる場合もあります。
大阪市内でも不動産の価格が上昇していて、買主が元々希望していた価格で買うことが難しくなりました。バブル後、「これからはキャピタル狙いから、収益重視の世の中になるし、“収益還元法”(注1)に基づいて不動産の価値は決まるから安心だ…」みたいなことが言われていましたが、本当にそうなってますか?
現状を見ると、大阪中心部などではミニバブルと言われているくらい不動産価格は上昇していて、収益用不動産の利回りは低下し、数年前でしたら表面利回10%位の物件を探すのはそれほど難しくなかったのに、今では6~7%位の物件の成約事例が珍しくなくなっている状況です。
いわゆる割引率(≒期待利回り)が高いと、物件価格は低くなるのですが、売出物件の利回りが低下しているにもかかわらず、収益や配当などを目論んで、物件を取得する勢いは続いています。
この状況は、先にある”収益還元安心説”に反しているように感じますが…でも、
収益還元法の基本的考え方は、月々・年々の収益の累積額と想定される売却価格の合計です。
収益還元法(DCF)⇒毎年の収益額合計+想定売却価格
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特に毎年の収益額が多少違うケースと比較して、(想定)売却価格が上下したケースの方がその価格に与える結果はより大きく違ったものになります。(注2)
以前のようなキャピタル狙いでなくても、やはり不動産の値上がりは非常に妙味があるはずです。
収益還元価格を算出しようとすれば、家賃の動向・空室率・金利の変化・管理費等のコスト・売却価格などのデータが必要ですが、それには様々な予測・憶測が入るわけで、もしそれなりの理屈をつけるならば、(極端な話しですが)算出価格はどうにでもなるはずです。
特に、想定される売却価格は予測すること自体が不可能ですから、悪意ある知恵者が利用するとある意味で“便利”な道具にも成りえます。
証券化を対象とした物件でなくても収益用不動産は、一般には大型物件と考えられている価格ですが、取引件数自体も個人対象の不動産(住宅・マンション等)に比べて圧倒的に少なく、取引理由も帳簿上の都合等で行っていたりして、その成約金額が本当に市場性に基づいたものかどうか疑問なケースもあったりします。
又、取引の当事者以外の人が、その不動産取引内容を正確に知ること自体が非常に難しいものです。
その上、金利・景気・物価・税制…の変化など個別の要素が多すぎて、こうなるとよく解らないことだらけです。
購入時に一生懸命“不動産投資”を検討したように、然るべき時期に売却価格についてシュミレーションしてみることは大事です。
プロでも素人であっても、不動産投資を行っている場合、「出口戦略」も知っておかないと片手落ちというべきでしょうから。
不動産投資は金融機関の融資に大きな影響を受けるものです。
最近、金融機関が不動産融資に慎重になりつつあるという話を耳にするようになり ました。潮目を見逃さないようにしないといけませんし、少なくともこのホームページを 見て頂いた方にはババを摑むのだけを避てほしいものです。
(注1)収益還元法関連PAGE(過去の記事)
(注2)
★この2物件の投資利回りは8.14%です★
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毎年の収益に優れた物件
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値上がり益のある物件
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計算の前提条件
購入価格 3億円
投資期間 10年間
毎年の純収益 2400万円…8%
10年後の売却予想額 3億600万円
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計算の前提条件
購入価格 3億円
投資期間 10年間
毎年の純収益 2100万円…7%
10年後の売却予想額 3億5000万円
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※ 純収益とは家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税等を控除後の金額です。
※ 毎年の純収益は10年間同じとして計算しました。
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検証
A:毎年の純収益の現在価値累計
年次
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純収益
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8.14%の複利現価率
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現在価値
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1年目
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2400万
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×0.924727=
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2219.3万円
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2年目
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2400万
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×0.855120=
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2052.3万円
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3年目
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2400万
|
×0.790753=
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1897.8万円
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4年目
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2400万
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×0.731231=
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1755.0万円
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5年目
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2400万
|
×0.676189=
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1622.9万円
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6年目
|
2400万
|
×0.625290=
|
1500.7万円
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7年目
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2400万
|
×0.578223=
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1387.7万円
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8年目
|
2400万
|
×0.534699=
|
1283.3万円
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9年目
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2400万
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×0.494450=
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1186.7万円
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10年目
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2400万
|
×0.457232=
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1097.4万円
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計
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16003.0万円
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B:10年後に売却した場合の転売価格の現在価値
10年後の転売価格×8.14%の複利現価率
=30600万円×0.457232=13991.3万円
A+B=16003.0万円+13991.3万円=29994.3万円
≒3億円
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検証
A:毎年の純収益の現在価値累計
年次
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純収益
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8.14%の複利現価率
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現在価値
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1年目
|
2100万
|
×0.924727=
|
1941.9万円
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2年目
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2100万
|
×0.855120=
|
1795.8万円
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3年目
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2100万
|
×0.790753=
|
1660.6万円
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4年目
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2100万
|
×0.731231=
|
1535.6万円
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5年目
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2100万
|
×0.676189=
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1420.0万円
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6年目
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2100万
|
×0.625290=
|
1313.1万円
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7年目
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2100万
|
×0.578223=
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1214.3万円
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8年目
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2100万
|
×0.534699=
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1122.9万円
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9年目
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2100万
|
×0.494450=
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1038.3万円
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10年目
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2100万
|
×0.457232=
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960.2万円
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計
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14002.6万円
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B:10年後に売却した場合の転売価格の現在価値
10年後の転売価格×8.14%の複利現価率
=35000万円×0.457232=16003.1万円
A+B=14002.6万円+16003.1万円=30005.7万円
≒3億円
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